尺の内公園

TEL:0853-63-7878
(ホシザキ野生生物研究所)

 

ふるさと尺の内公園の環境整備について

多様な生物の生息環境の創出と魅力ある公園づくり

ホシザキグリーン財団では、ふるさと尺の内公園がより多くの生きものが生息できる空間となることに加えて、より自然に親しみやすい公園、魅力ある公園となるように園内の環境整備を進めています。 園内の整備は、ランドスケープデザイナーのポール・スミザー氏の指導・協力のもと、外来種や園芸種は使用せず、公園近辺に自生する在来植物を植栽することにしています。現在も引き続き公園近辺に自生する在来の多年草を中心とした植栽を進めています。今後も少しずつ園内の環境は変化していきますが、メイン園路や東屋の整備にはじまり、各種ビオトープの改良、植栽スペースの整備や管理棟改修まで進めてきた公園の基盤となる整備が2018年初夏までに一区切りついたことから、園内の環境について改めて紹介いたします。

管理棟

◎人と生きものの利用空間を分ける

 

あずまやあずまやあずまや

公園でありビオトープでもある、ふるさと尺の内公園の園内は、「人が利用する空間」と「生きものが生息する空間」とに分ける必要があると考えています。

管理上の区分

園路を中心とした人の利用を優先した区域と利用を制限した区域の設定をしています。

植栽上の区分

低い石組を設け、砂を入れ、柵で囲うなどし、園路との区分けをしています。また、日当たりや水分などの条件に応じて、草原ゾーン、森林ゾーンなどを設定し、その場所の環境に適した在来植物による植栽を進めています。

*ご来園のみなさまには、園路をご利用いただき、安全面からもロープや植え込みで仕切られている内側、植栽が施されている場所、小川や池の中や向こう岸には入らないようご協力をお願いいたします。

◎歩きやすいメイン園路

園路

駐車場から園内を一周できるメイン園路は、舗装されているので雨天時も歩きやすく、公園北側にある道の駅「さくらの里きすき」まで行くことも可能です。

◎地域在来の多年草による植栽

公園の魅力アップの方法として、近辺に自生する在来の多年草を中心とした植栽を進めることにしました。ふるさと尺の内公園はもともと野生動植物の生息場所として整備されたこともあり、ともすれば外来種などに優占されてしまいがちな環境を、この地域にあった在来植物中心の環境が優占するように保全していくことで、より良い野生動植物の生息環境の提供につながっていくものと考えています。

◎樹木の伐採と木積

草地・裸地ビオトープ試験区

公園内に植栽された樹木は開園から20年以上が経過し、大きく生長しました。枝葉が広がり、混み合ってきたことで枝枯れも見られるようになりました。そのため、剪定はもちろん、低く幹を残して切ることで萌芽させて高低差をつけたほか、場所によっては伐採も必要でした。これにより生育した木々に適した状態となり、林床に日光が当たりやすくなったほか、園内の見通しも良くなりました。また、伐採した樹木の幹は積み上げて、小動物の生息場所としています。

◎石積みにより生息空間の広がり

草地・裸地ビオトープ試験区草地・裸地ビオトープ試験区草地・裸地ビオトープ試験区園内のところどころに石を置いたり、モルタルで固めずに石を積み上げています。そうすることで石と石の間に空間ができ、そこへ植物を植え込んだり、トカゲやヘビなどの生きものが利用したりして、多様な生きものの生息場所となっています。

◎景観にあわせた新しい管理棟

整備

建物の全面改修  
建物の老朽化に伴う改修に加え、普及啓発などの利用および公園管理の作業スペースの確保といった機能の向上を目的として建物を全面改修しました。
特徴的な草屋根
管理棟は、園内全体の植栽計画に合うよう景観にも配慮した設計をしました。いちばんの特徴は、屋根に植栽ができるようにしたことです。建物の手前の植栽から草屋根、そして奥の丘陵地の林までつながる植物の景観が建物の存在感を和らげてくれつつ、その特徴から公園の見所の一つになっています。屋根の植物は、園内全体で進めている植栽と同じく、公園近辺に自生している在来の多年草です。園内の植栽は、多様な動植物の生息場所としての機能向上も目的としていますが、管理棟のスペースもその一部となります。また、夏場の高温対策・省エネルギーといった効果も期待されます。

ビオトープ機能の充実

整備整備

小川や池の拡幅

公園内には、3つの池とそれをつなぐ小川があります。小川はホタルの生息場所となっていますが、泥の堆積によって埋まったり水の流れがわるくなったりしているところがあったため、ホタルの産卵に影響がでないよう部分的に掘り上げて水流を良くしました。また、絶滅危惧種であるオニバスの系統保存を行っている池は、多様な水生植物が生育できるよう拡張しました。

整備整備

モリアオガエルの池の改修

公園内にある湧水を水源とした小さな池に、モリアオガエルが産卵に来ていることが判明し、外来生物のアメリカザリガニの捕獲・回収をはじめ、ザリガニの侵入防止の柵を設置しました。

オタマジャクシのかくれ場所や、エサとなる水草や小動物をふやすため、池の中には水草を植えています。

整備整備半湿性ビオトープの創出

公園内には、かつて菖蒲園としていた窪地がありましたが、乾燥化が進んでセイタカアワダチソウなどが生える草むらになっていました。そこで、窪地の形状を利用して、園路に降った雨が流れ込むように設計し、水が浅く溜まるビオトープを造成しました。少し掘り下げたことで湧水も出るようになり、降水量に応じて水が増えたり、なくなったりします。この水量変化は一時的に水域を利用する昆虫や両生類の繁殖場所として機能し、大きな石や切り株を置くことにより、カエルやトカゲの日光浴や隠れ場所、ヤゴの羽化・トンボのとまる場所として利用されています。

◎モニタリング調査

整備整備

公園内および隣接する山林において、各種動植物の生息生育状況を調査しています。それによって得られた知見は整備や管理の参考にする一方、その効果を検証することもあります。例えば、公園内では在来の多年草を植栽していますが、このことにより多年草を食べる昆虫や花を訪れる昆虫の種や数がどのように変化するか、チョウやハナバチ、ハナアブなどの経年的な変化を調べています。多年草の定着に伴い、確認される昆虫の種数も増えてきています。

◎外来植物への対応

整備公園内には、開園から20年以上が経過する間に、さまざまな外来植物が見られるようになりました。なかには園内の全体または一部で優占してしまっているものもあります。この植生を回復させるため、植栽場所に繁茂する外来植物を取り除き、池に生息する水生の外来生物や在来植物を公園内で復活させる取り組みを行っています。

◎外来生物への対応

整備整備公園内の小川や池には、開園後に侵入したアメリカザリガニが定着し、植物や水生生物に与える食害により、本来生育すべき在来の生物の生息が困難な状況が続いていました。園内の池でのオニバス生育の取り組みを契機として、園内全体としてアメリカザリガニの低密度化やひいては根絶を目指して捕獲を継続しています。隙間などに隠れる性質や、繁殖能力の高さにより、公園内からの根絶は難しい状況ですが、モリアオガエルの池や半湿性ビオトープでは、干し上げなども行って低密度の状態を維持しています。低密度化によって、カエルなどの両生類やトンボ類の繁殖環境を保全しています。


◎水質浄化への取り組み

整備整備
ふるさと尺の内公園の水域は、ホタルやカエルなど水生生物の生息場所として、公園内の重要な役割を果たしています。しかし、池や小川には落ち葉などが沈み泥になることで、水域は富栄養の状態になっていました。この富栄養な泥を用いてオニバスの系統保存が可能になっていますが、ほかの場所では、緑藻が水面に浮いてたまり、景観や水質には好ましくありませんでした。水草の力を借りて水の中の栄養塩類を吸収するなどの取り組みをはじめています。水域にさまざまな水生植物を植栽することで植生が豊かな水辺に生息する昆虫などが見られるようになってきました。