Web版ネクイハムシ図鑑

−日本産ネクイハムシ亜科全種の解説と絵解き検索−

1.はじめに

このページは日本に分布しているネクイハムシについて,成虫を中心に形態や分布,生態について解説したものです.内容は,主として下記の論文を基に作成しています.なお,本ページに含まれるすべての著作物を作成者に無断で使用することはできません.

・林 成多,2004,総説・日本のネクイハムシ亜科.ホシザキグリーン財団研究報告,(7): 29-126. PDF(8.7MB) 正誤表はこちら

・林 成多,2004,日本産ネクイハムシ亜科の絵解き検索による同定.ホシザキグリーン財団研究報告,(7): 127-136. PDF(3.2MB)

*本サイトは日本昆虫学会電子化推進委員会昆虫関連「優秀ホームページ」に対する「あきつ賞」2005年(平成17年)受賞サイトです

2.ネクイハムシとは?

ネクイハムシは,分類学的には昆虫綱コウチュウ(甲虫)目ハムシ科ネクイハムシ亜科に属する昆虫のことです.ハムシ(葉虫)とは主に植物の葉を食べる甲虫の仲間で,カミキリムシやゾウムシに近い昆虫とされています.ハムシの仲間であるネクイハムシは,漢字で「根喰葉虫」と書き,幼虫が水草の根を食べるという生態にその名の由来があります(中国語では水叶甲と書き,水辺に生息することに由来しているものと思われる).ハムシの中では,クビボソハムシ(クビナガハムシ)やコガネハムシ(日本にはいない),マメゾウムシ(近年,ハムシ科になった)に近縁だと言われています.日本のハムシの中では,クビボソハムシにもっともよく似ています.成虫は体長5-12mm程度の細長い体型をしています.成虫は水辺に生える植物の葉や花粉,蜜などを食べています.幼虫は水底の下で水草の根を食べます.呼吸はお尻にあるトゲを植物の組織に差し込んで,酸素を得ているそうです.幼虫は根や地下茎に繭をつくり,その中で蛹になりやがて羽化します.

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ネクイハムシの食草図鑑はこちら.(NEW!)

3.日本のネクイハムシ

林(2004)において,下記の22種が日本から知られていますが,2005年にキイロネクイハムシ属の未定種が北海道より報告されました(伊藤ほか,2005)

*本ページをはじめ多くの文献でクロガネネクイハムシの学名D. flemolaをD. flemoraと誤記していました.訂正します.

Plateumaris  ミズクサハムシ属
1. P. akiensis Tominaga et Katsura, 1984 アキミズクサハムシ(アキネクイハムシ)
2. P. constricticollis (Jacoby, 1885) オオミズクサハムシ(オオネクイハムシ)
 2a. P. c. constricticollis (Jacoby, 1885) エゾオオミズクサハムシ(基亜種)
 2b. P. c. babai Chujo 1959 シナノオオミズクサハムシ
 2c. P. c. toyamensis Tominaga et Katsura, 1984 トヤマオオミズクサハムシ
3. P. weisei (Duvivier, 1885) ヒラシマミズクサハムシ(ヒラシマネクイハムシ)
4. P. sericea (Linnaeus, 1761) キヌツヤミズクサハムシ(スゲハムシ)
5. P. shirahatai Kimoto, 1971シラハタミズクサハムシ(シラハタネクイハムシ)
Donacia ネクイハムシ属
Donaciomima フトネクイハムシ亜属
6. D. (D.) bicoloricornis Chen, 1941 キアシネクイハムシ
7. D. (D.) clavareaui Jacobson, 1906 フトネクイハムシ
8. D. (D.) flemola Goecke, 1944 クロガネネクイハムシ
9. D. (D.) frontalis Jacoby, 1893 アオノネクイハムシ
10. D. (D.) hirtihumeralis Komiya et Kubota, 1987 アカガネネクイハムシ
11. D. (D.) japana Chujo et Goecke, 1956 キンイロネクイハムシ
12. D. (D.) katsurai Kimoto, 1981 カツラネクイハムシ
13. D. (D.) nitidior (Nakane, 1963) ツヤネクイハムシ
14. D. (D.) sparganii gracilipes Jacoby, 1885 アシボソネクイハムシ
15. D. (D.) splendens Jacobson, 1894 ヒラタネクイハムシ
 15a. D. (D.) splendens splendens Jacobson, 1894 キタヒラタネクイハムシ(基亜種)
 15b. D. (D.) splendens hiurai Kimoto, 1983 ヒウラヒラタネクイハムシ
16. D. (D.) tominagai Hayashi, 2000 ニセヒラタネクイハムシ
17 D. (D.) vulgaris Zschach, 1788 ホソネクイハムシ
Donacia コウホネネクイハムシ亜属
18. D. (D.) akiyamai Komiya, 2001 セラネクイハムシ
19. D. (D.) ozensis Nakane, 1954 コウホネネクイハムシ
Cyphogaster イネネクイハムシ亜属
20. D. (C.) lenzi Schonfeldt, 1888 ガガブタネクイハムシ(ネクイハムシ)
21. D. (C.) provostii Fairmaire, 1885 イネネクイハムシ
Macroplea キイロネクイハムシ属
22. M. japana (Jacoby, 1885) キイロネクイハムシ

23. Macroplea mutica (Fabricius). キタキイロネクイハムシ

日本産ネクイハムシの県別分布表はこちら

4.ネクイハムシの同定

ネクイハムシの同定は決して簡単とは言えません.最初はどれも同じようにみえるはずです.しかし,見分けるのに重要な特徴を注意深く観察しながら検討を行えば,ほとんどの種は簡単に同定できるようになるはずです.このページでは「日本産ネクイハムシ亜科の絵解き検索による同定」を基にWeb版の絵解き検索を作成してみました.1種の標本しか手元にない場合,まったく違う種に行き着くこともあるかもしれません.少しずつ種類を増やしながら同定を行えば,いずれ肉眼でも名前がわかるようになるでしょう.ぜひ活用してみてください.

絵解き検索はこちらのページです

5.ネクイハムシ文献リスト

不十分ではありますが,ネクイハムシの文献リストを作成しました.化石の文献も含みます.今後,充実していきたいと考えています.

文献リストはこちらのページです. 

作成者:林 成多(ホシザキグリーン財団)

Masakazu Hayashi (Hoshizaki Green Foundation)

作成日:2005/3/3

更新日:2005/10/5

更新情報はこちら

    

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