天狗の鼻のような突起を持つゲンゴロウの幼虫が
カイミジンコの捕食に特化していることを論文発表しました

発見されてから90年以上、どのように使われているのか不明なままだったゲンゴロウの一種・ケシゲンゴロウの幼虫の頭部にある長い突起(図1)が、二枚貝のような殻を持つ小さな甲殻類・カイミジンコ(図2)を効率的に捕食することに使われていることが明らかになりました。公益財団法人ホシザキグリーン財団の林 成多研究員と長崎大学教育学部数理情報講座の大庭伸也准教授の研究グループは、室内実験によって、ケシゲンゴロウの幼虫が頭部の長い突起と大アゴを用いてカイミジンコを効率良く捕獲すること(図3動画1)、殻を破壊することなく内部を消化・吸収していることを確かめました。 ケシゲンゴロウの仲間を除いたゲンゴロウ科をはじめとする肉食性の昆虫の幼虫は、左右に大きく開く大アゴで小動物を捕獲します(図4)。一方、今回着目したケシゲンゴロウやその仲間のゲンゴロウの幼虫では、頭部に長い突起があり、大アゴが上下に動くことによって、獲物を挟んで食べることが知られていますが、その具体的な獲物については不明でした。 二枚貝のような殻を持つカイミジンコは水田などに見られるミジンコの仲間で、通常はその殻を開き、脚を動かして泳ぎますが、危険を感じると殻を閉じます。殻は硬いため、小型の肉食性水生昆虫はこの殻を破壊することができません。ところが、ケシゲンゴロウの幼虫はカイミジンコの殻が開いている時を狙って大アゴを差し込み、頭部の突起と挟むことによって固定・捕食します。殻の内部を消化液で溶かすため、捕食後には2枚の殻はそのまま残ります。このような捕獲方法はこれまでに知られていなかった方法として注目されるだけでなく、ゲンゴロウ科の約半分を占めるケシゲンゴロウの仲間が、陸水環境でどのように進化・多様化し、生態的ニッチを獲得したのかを解明するのに貢献すると期待されます 。

なお、本研究の成果は英国の進化生物学の専門誌『Biological Journal of the Linnean Society』に8月14日に公開されました。

※詳細は別ページをご覧ください。


図1 ケシゲンゴロウ幼虫の頭部



図2  カイミジンコ(左)とケシゲンゴロウ幼虫(右)


図3  カイミジンコを捕獲したケシゲンゴロウ幼虫

図4  左右に動く大顎をもつゲンゴロウ科の幼虫

動画1 イボカイミジンコを捕食するケシゲンゴロウ幼虫

動画2 イボカイミジンコを捕食しようとするが失敗したクロマメゲンゴロウ幼虫


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