カタビロアメンボ科の研究成果を報告しました

 カタビロアメンボ科は、水面上を走り回る小さな水生カメムシで、ため池、水田、河川などに生息しています。日本からはこれまでに21種が知られていました。このうち、河川や湖に生息するナガレカタビロアメンボ属には不明種が知られており、見た目が良く似ていることから、長らくの間その正体は不明のままでした。島根県でも斐伊川の下流域に生息しています。
 今回、DNA分析を用いて斐伊川をはじめとした日本各地のサンプルを比較した結果、東北地方に分布するエサキナガレカタビロアメンボと同じであることがわかりました。

斐伊川下流に生息するエサキナガレカタビロアメンボ

また、琵琶湖の個体群は明らかに既知種と異なっていることがわかり、形態を詳しく検討したところ新種であることも判明しました。学名はPseudovelia lasiomma、和名はビワコナガレカタビロアメンボです。この新種の研究は、石川県ふれあい昆虫館の渡部晃平学芸員、ホシザキ野生生物研究所の林 成多研究員の共同で実施されました。
本研究成果は、DNA分析についてはホシザキグリーン財団研究報告特別号32号、新種は動物分類学の国際誌Zootaxaに掲載されました。

【論文情報】
林 成多・相馬理央・渡部晃平(2023)本州産ナガレカタビロアメンボ属のDNAバーコード領域.ホシザキグリーン財団研究報告特別号32号: 1–7.
PDFへのリンク: https://www.green-f.or.jp/kenhou/DNA_B/Sbhgf_32_001.pdf

Kohei Watanabe & Masakazu Hayashi (2023) A new species of Pseudovelia Hoberlandt, 1950 (Hemiptera: Heteroptera: Veliidae) from Honshu, Japan
掲載誌:Zootaxa Zootaxa 5239 (4): 551–562.
論文のサイトへのリンク: https://doi.org/10.11646/zootaxa.5239.4.6


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