隠岐島後を訪ねて

2004年8月、はじめて隠岐の島後へ行って来ました。隠岐諸島は佐渡島と並ぶ日本海にある代表的な大きな島で、多くの固有種・亜種が生息しています。島根の自然を語る上でもとても重要な場所の一つです。せっかく島根に来たのだから、隠岐には行かなくてはなりません。というわけで思い切って隠岐に行ってみることにしました。

隠岐へ行くには船か飛行機で渡るしかありません。費用を考えれば、やはり船での渡航が現実的です。今回は2泊3日だったので、島での時間が多くとれるよう、行きはフェリー、帰りは高速船で行くことにしました。島後の西郷港は七類港からフェリーで2時間半です。西郷港についてまず行ったのが港のすぐ近くにある隠岐自然館です。隠岐の鳥や昆虫、貝、植物、地質について予習ができます。現在、友人が学芸員をしているので、彼から島のポイントや最近の情報を仕入れてフィールドへと出かけました。

はじめての隠岐ということで、できるだけ「オキ」と名の付く動植物をみておきたいものです。最初に見つけたのは道路の側溝に落ちていたオキオサムシです。ダイセンオサムシの亜種でもちろん隠岐固有亜種です。島内の道路にはたいてい立派な側溝があるので、虫探しには最適です。しかし残念ながら、オキマイマイカブリはみつけられませんでした。次に見つけたのはオキタゴガエルです。山道に幼体がたくさんいました。島後にはヤマアカガエルがいないので、同定が楽です。また、大きな個体もいくつかみかけましたが、逃げ足が速く写真を撮らせてもらえませんでした。なお、オキタゴガエルはタゴガエルの亜種ですが、図鑑をみると学名はまだついていないようです。固有種としては、オキサンショウウオがいます。成体はめったにみつけることはできませんが、環境の良い山地の渓流で幼生をみることができます。これを地元では「足ゴズ」と呼ぶそうで、足の生えたハゼという意味は妙に納得させられます。それから、おそらく「オキ」と名の付くであろう陸貝もいくつかみつけましたが、名前がよくわかりませんでした。

夜は友人のおかげで二晩連続で灯火採集をすることができました。アゲハモドキやカマキリモドキなど灯火をしないとなかなかみられない昆虫を久しぶりにみることができました。カブトムシやノコギリクワガタも飛んできました。ハヤケノウマオイやハヤシノウマオイ、クツワムシなどもすでに鳴き始めてなかなか楽しい夜間採集となりました。

今回ははじめての隠岐で右も左もわからない状態でしたが、やっと島後の地理が頭に入りました。まだみていない生きものもたくさんいるのでまた行きたいです。いずれは島前にも渡ってみたいです。なお、帰りに乗った高速船はたったの1時間で七類港に帰ってきてしまいました。(林 成多)

オキオサムシ

側溝で発見。ミミズを食べていた。赤い体色が特徴なのだそうです。

オキタゴガエル

地面にいた幼体を撮影。

オキサンショウウオの幼生

まだエラがある。模様は黒のぶちだった。足ゴズという呼び名はとてもユニーク。

クツワムシ

はじめてみました。緑色の個体もいた。

油井ノ池

予想以上に大きな池だった。水辺に行くのは意外と大変だった。ウシガエルがたくさんいた。

灯火採集

通称ナイター。ブラックライト(紫外線)にたくさんの昆虫が集まってくる。天気に恵まれ、様々な昆虫をみることができた。

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