ヒメヒラタドロムシ Mataeopsephus maculatus Nomura, 1957

Mataeopsephus maculatus Nomura, 1957(原記載)
Mataeopsephus maculatus: 中根(1963),Sato (1976), 佐藤(1985b),吉富・佐藤(2003),Lee et al. (2003), Jach et al. (2006)

基準産地.Kuroson, Praf. Kochi

形態的特徴.
 成虫の体長は4.8-5.1 mm(佐藤,1985b).背面は全体に黒色.体は扁平.雄の体はヒラタドロムシに比べ明らかに細く,触角や小顎ひげも長い.雌雄共に触角は櫛ヒゲ状にならず,節の形は単純.頭部,前胸背板,上翅は黒色.前胸背板は光沢がまったくないのに対して,上翅には光沢がある.前胸背板には,一対の赤色斑が前方中央寄りにあるが,斑紋の大きさに変異がある.
 蛹化は終齢幼虫の背面側の脱皮殻の中で行われ,蛹は幼虫の殻に対して直角に回転する.腹面側の脱皮殻は,尾部側から外に排出されず,殻の中の尾部に残る.前胸背板の前縁は陣笠にように広がり,頭部の基部を覆い,複眼は隠れる.腹部の側方にはヒレ状の側片がある.腹部第6・7節の側片には先端に穴の空いた突起(気門)があり,脱皮殻の中で回転した際に外側に露出する.蛹は刺激を与えても腹部を動かすことはない.
 幼虫は腹部の方がやや狭まる逆卵形.縁の毛の長さが揃っている.腹部第8節は側片を欠く.表面の模様は変異があるが,かなり明るい色の個体が多い.表面には直立した毛は認められない.腹面側の腹部には5対のハケ状のエラがある.ヒラタドロムシの幼虫とは,縁の毛の形状とエラの数などで区別できるが,見慣れれば体型や胸部の模様(小黒点からなる網目模様)で簡単に識別できる.
 卵は未確認.

生態.成虫は8月に出現する.島根県や鳥取県における野外観察では,成虫は日中,流路中にたまったスギの落ち葉の中に潜んでいる.しかし,雌を確認したことがなく,雄とは異なる場所にいる可能性がある.飼育での観察では昼間は物陰に隠れているが,夕方になると活発に動き回っていた.幼虫も日中は石の下に隠れているが,夜になると動き回る様子を飼育条件で確認している.夏季における野外での幼虫のサイズの組み合わせは,明らかに大小の2つ以上のグループに分かれ,卵から成虫まで2年以上を要するとみられる.

分布.本州,四国.

備考.丸山・高井(2000)にて「写真4-28. ヒラタドロムシ(高知県南国市 1995年4月)」として掲載されている幼虫の写真は,ヒメヒラタドロムシに同定される.

成虫(オス)

成虫(メス)

幼虫


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