ヒラタドロムシ Mataeopsephus japonicus (Matsumura, 1916)

Betelmis japonicus Matsumura, 1916(原記載)
Mataeopsephus japonicus sasajii M. Sato, 1970(原記載)
Mataeopsephus japonicus: 河野(1950),宮本(1953),中根(1963),Sato (1976), 佐藤(1985b), 吉富・佐藤(2003), Lee et al. (2003), Jach et al. (2006)
Mataeopsephus coreanicus sasajii: 中根(1991)
Mataeopsephus japonicus sasajii: 吉富・佐藤(2003)

基準産地.Gifu.

形態的特徴.
 成虫の体長は5.7-7.7mm(Lee et al., 2003).体は扁平.雌雄共に触角は櫛ヒゲ状にならず,節の形は単純.頭部,前胸背板,上翅は黒色.前胸背板は光沢がまったくないのに対して,上翅には光沢がある.小顎ひげは雌雄共に頭部の幅より短く,雌の方がより短い.
 蛹化は終齢幼虫の背面側の脱皮殻の中で行われ,蛹は幼虫の殻に対して直角に回転する(佐藤,1972).腹面側の脱皮殻は,尾部側から外に排出されず,殻の中の尾部に残る.前胸背板の前縁は陣笠にように広がり,頭部の基部を覆い,複眼は隠れる.腹部の側方にはヒレ状の側片がある.腹部第6・7節の側片には先端に穴の空いた突起(気門)があり,脱皮殻の中で回転した際に外側に露出する.蛹は刺激を与えても腹部を動かすことはない.
 幼虫は円形.縁の毛は軟毛状で不揃い.腹部第8節は側片を欠く.表面の模様はかなり変異があり,かなり明るい色のものから全体に黒くなる個体もいる.腹面側の腹部には6対のハケ状のエラがある.本種の幼虫は古くから良く知られており,御勢(1955)以降,多くの文献で紹介されている.
 卵は未確認.佐藤(1972)によると,卵の大きさは0.5 mmである.なお,佐藤・高岡(1960)は1.5 mmと報告しているが,何らかの間違いと思われる.

生態.島根県での観察では,成虫は7月から8月に出現し,7月の下旬には多数の個体が灯火に飛来する.成虫は日中,川辺の石の隙間などに隠れている.日中でも流れの中から多数の成虫が得られることがある.
 産卵は水中で行われ,レキの下面に卵を密集させて生みつける(佐藤・高岡,1960;佐藤,1972).1回の産卵数は40-50個である(佐藤,1972).幼虫は上陸してレキ下に潜り込み,石の下面や側面で蛹化する.

分布.北海道,本州,四国,九州,隠岐,対馬;朝鮮,中国,沿海州.

成虫(オスとメス)

幼虫


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