チビヒゲナガハナノミ Ectopria opaca (Kiesenwetter, 1874)

Grammeubria opaca Kiesenwetter, 1874(原記載)
Grammeubria opaca:中根(1948),中根(1956),中根(1963),Sato (1983)
Ectopria opaca: 佐藤(1985a), 佐藤(1985b), Lee and Yang (1994), Lee et al. (1998a), 吉富・佐藤(2003),Jach et al. (2006)
Helichus sp. HB: 御勢 (1957)(幼虫).

基準産地.Nangasaki. (Nagasakiの誤記か)

亜種.アマミチビヒゲナガハナノミ E. o. tomokunii Lee, Yang et Sato, 1998がMikyo, Tokunoshima I.を基準産地として記載されている.

形態的特徴.
 成虫の体長は2.4-3.5mm(佐藤,1985b).頭部,前胸背板,上翅は黒色.触角は第1節が黄褐色で他の節は黒褐色から黒色.肢は黒褐色から黄褐色.体型は全体に楕円形だが,体幅は上翅中央より下方側がもっとも太い.前胸背板の中央基部に一対のくぼみがある.触角は,雄は鋸歯状で,雌は弱い鋸歯状.奄美大島と徳之島産の個体は体色が薄くなり,全体に茶褐色をしている.
 蛹は幼虫の殻に覆われない.背面側に盛り上がり,腹面側はやや平坦.腹部側面に細長い突起があり,小さく分岐する.表面には不規則な形状の毛が密生しているほか,背面にはやや長い毛の生えた2列がある.刺激を受けると,腹部を左右に動かし,移動する.
 幼虫は非円形で隣接する腹部背板の側片はそれぞれ分離している.全体にやや細長い逆卵形.胸部の側片は幅があり,先端は下方へ曲がり,先端は角張る.腹部の側片は胸部側片より細く,下方へ緩く曲がる.尾突起は長方形で,先端は切断状.表面には顆粒があり,6条の顆粒列が認められる.色彩は変異があるが,胸部背板各節の中央寄りに一対の明色斑,腹部背板第1・2,5・6節の外縁寄りに一対の明色斑がある.イシガキチビヒゲナガハナノミの幼虫とは,側片の幅が全体に狭いことで区別できる.本種の幼虫は鳥潟(1953)によって初めて報告され,御勢 (1957)はHelichus sp. HBとして記載している.
 卵は未確認.

生態.島根県や鳥取県での観察では,成虫は5月から6月に出現し,川沿いの植物上にみられる(図39).昼間には活発に飛翔する.灯火への飛来は確認していない.飼育条件では,終齢幼虫は水辺に上陸して石の表面で蛹化した.蛹は腹部を活発に動かし,移動することができる.野外では1例のみであるが,堰堤壁面に生えた植物の根の中から蛹を確認した.

分布.本州,四国,九州,隠岐,対馬,奄美大島,徳之島.このうち,亜種のアマミチビヒゲナガハナノミは奄美大島,徳之島に分布する(Lee et al., 1998).

成虫(オス)

成虫(メス)

アマミチビヒゲナガハナノミ(メス)

黒くないのがこの亜種の特徴

幼虫

チビヒゲナガ(左)とイシガキチビヒゲナガ(右)の比較


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