平成19年度 (財)ホシザキグリーン財団事業計画


 本財団は、野生生物の保護繁殖に関する事業を実施し、もって人と自然の調和した自然環境の保全に資することを目的とする。また、特定公益増進法人として公益性の高い事業を展開することによって、自然保護および環境啓発の方面から社会貢献に努める。
 事業を進めるにあたって、ホシザキ野生生物研究所を活動の拠点とし、宍道湖グリーンパークならびに受託管理の島根県立宍道湖自然館と一体となって調査研究、普及教育、情報収集発信事業を展開していく。また、ふるさと尺の内公園を維持管理し、必要に応じて整備しながら、野生動植物の保護繁殖ならびに普及教育など目的や方針に沿った事業に供する。
 経営計画に基づく独自事業の実施と共に、国、県、市、その他の関係機関と連携した事業展開を図る。各事業活動をとおして、地域住民、研究者、ナチュラリスト、ボランティアなど幅広い人材ネットワークを構築することによって、事業の幅を広げ、その質を高める。
 組織面では、運営に全職員の英知を結集し、計画的、合理的かつ効率的な経営のもとに目的とする事業を推進していく。
 ホシザキ電機グループの一員として、地球環境の保全ならびに啓発に努める。

1.「ホシザキ野生生物研究所事業」の基本的な考え方
(1) 方針
地域に密着した調査と研究を実施する。特に西日本有数の水鳥飛来地でありラムサール条約登録湿地となった宍道湖・中海の特性を生かした事業に積極的に取り組む。
宍道湖グリーンパークと宍道湖自然館ゴビウスの各事業と密接に連携する。
グリーンパーク(ビオトープ池)と尺の内公園を付属施設として位置付けて、研究ならびに自然学習や環境啓発事業の場にする。
専門的学術研究を進め、同時にその活動ならびに成果を市民向け普及活動につなげる。

(2) 具体的な進め方
グリーンパーク内に新たに建設された研究所施設に必要な備品等を整備する。
新たに建設された研究所施設は特にグリーンパークと一体となった管理運営を行う。
 次の機関・団体、研究者・ナチュラリストと連携をとっていく。
 ・県内研究機関(島根大学、水産技術センター、汽水湖研究所、衛生公害研究所など)
 ・関連行政機関(島根県自然環境課、同森林整備課、同水産課、国土交通省、環境省、出雲市など)
 ・関連団体(野生生物研究会、野鳥の会県支部、むしの会、自然保護協会など)
 ・自然系施設(三瓶自然館サヒメル、しまね海洋館アクアス、米子水鳥公園、隠岐自然館など)
 ・近隣施設(サンレイク、湖遊館、フォーゲルパークなど)
 ・関連学会(昆虫学会、鳥学会、魚類学会、生態学会など)
 ・全国組織(山階鳥類研究所、国立科学博物館、日本鳥類保護連盟など)

2.「宍道湖グリーンパーク事業」の基本的な考え方
(1) 方針
宍道湖グリーンパークと宍道湖自然館ゴビウスが連携して事業を効果的に展開する。
野鳥や昆虫など多様な野生生物が生息し、来園者が散策や学習をしてみたいと感じる魅力ある環境の創造に努め、整備した環境を調査研究や普及教育事業に結びつける。
自然学習や環境学習を通して、地域住民、研究者、ナチュラリストが交流できる場となるよう努める。
自然環境保護に対する人々の学習を支援しながら、生涯学習施設として整備し充実を図る。
西日本有数の水鳥飛来地でありラムサール条約登録湿地となった宍道湖・中海の特性を生かした環境学習・啓発の機能強化に努める。

(2) 具体的な進め方
観察舎内の解説パネルを更新するとともに、園内の案内板や解説板の再整備を検討する。
駐車場および観察舎までの園路を再整備する。
園内やビオトープ池の各所において、鳥類や昆虫類などの生息環境をさらに充実させるための整備や管理手法を検討し、実行する。
生物多様性や来園者の興味関心を視野に入れた森の整備に取り組む。
自然観察会などを通じ、地域の人たちへの自然保護意識の普及啓発に努める。
パークボランティア制度による公園の維持管理と環境教育をめざす。
園内やビオトープ池、周辺に生息する鳥類や昆虫類などの効率的なモニタリングに努め、最新の自然情報の収集と発信につとめる。
地権者の理解を得て水田に水を張り白鳥の採食場としての環境整備を行うとともに、生物調査や自然観察会に活かす。

3.「ふるさと尺の内公園事業」の基本的な考え方
(1) 方針
里山環境にある公園として、野生生物の生息環境を整備しながら、人と自然のふれあいの場を提供できる公園づくりと活用を図る。
地元小学校、幼稚園、保育園や地域住民の環境教育・生涯教育に役立つ森とする。

(2) 具体的な進め方
来園者の目線に合わせた自然観察会や昆虫教室などを実施し、地域の人たちへの自然保護意識の普及啓発に努める。
案内板、解説板、樹名板を整備する。
昆虫、植生、鳥類調査を継続し、その結果を整備と普及活動に反映させる。
多様な野生生物が生息可能な環境の整備を進める。
希少植物や県内を代表する植物などの繁殖を進める。種の選定・配置にあたっては、整備計画に基づき、学習的な効果についても配慮する。
四季が楽しめる安全な自然観察道に加え、ベンチや東屋などを利便性だけでなく、生物の生息や普及啓発面にも配慮して効果的に配置するよう検討する。
4.「調査研究事業」の基本的な考え方
(1) 方針
県内の希少な野生動植物の分布、生態、減少要因などを研究する。
宍道湖や中海など県東部地域の自然特性を活かしたテーマに重点を置く。
宍道湖グリーンパーク(ビオトープ池)やふるさと尺の内公園など財団が整備してきた施設の特色を生かした調査や、それぞれの施設の整備や管理に生かすことができるような調査研究にも取り組む。
宍道湖、里山、水辺環境、希少種保護、生物多様性など多くのテーマがある中、限られた時間、設備、予算、スタッフの下で効率よく研究を進展させるため、職員の自主研究のほかに、大学や博物館との連携をはじめ、第一線研究者への委託研究、地域の研究者・ナチュラリストとの共同研究を実施していくほか、客員研究員制度の活用を検討する。
研究テーマの選択にあたっては、地域性、重要性、緊急性、発展性を常に考慮していく。

(2) 具体的な進め方
◎職員自主研究
 @鳥類の環境利用特性の研究(森 茂晃)
宍道湖西岸域を中心に鳥類の生息状況を把握し、湖面、河口、水田、ヨシ原、草地、河畔林などの環境要素の利用特性について検討する。
 Aマガン・ヒシクイ・コハクチョウの日周行動特性の研究(森 茂晃・野津登美子)
宍道湖西岸域に渡来するこれら鳥類の日周行動を調査し、ねぐら、採食場、休息場等の分布状況を記録することで、これら鳥類のおかれている現状を把握するための基礎データを蓄積する。
 Bヤマセミの生態に関する研究(森 茂晃)
県内(特に斐伊川水系)におけるヤマセミの生息状況について調査するとともに、利用環境との関係を考慮した調査を行う。
 C希少鳥類生息情報の集積(森 茂晃)
レッドデータブック掲載種など希少性の高い鳥類の生息情報を収集しデータベース化を図る。
 Dヒシクイ・ハクチョウ類のビルパターン解析(野津登美子・森 茂晃)
宍道湖西岸に渡来するヒシクイとコハクチョウのビルパターンの記録をとり、亜種や個体識別の情報として蓄積し、それらの効率的な解析方法を検討する。
 E出雲平野で越冬するマガンおよび亜種ヒシクイの採餌行動調査(野津登美子・足立容子)
宍道湖周辺で越冬するマガンやヒシクイの採餌行動の観察と、食草や糞に含まれる窒素栄養物の解析等(共同研究者:岩手大学農学部教授溝田智俊)を行なう。
 Fビオトープ池の生物調査(森 茂晃・林成多・土江好子)
北側用地に造成されたビオトープ池とその周辺の田んぼの鳥類や水生生物を継続的に調査し、ビオトープ池における生物種多様性のありかたと今後の維持管理に役立てる。
 G尺の内公園の生物調査(森 茂晃・林 成多)
公園および周囲の森林の鳥類や昆虫を継続的に調査し、尺の内公園における生物種多様性のありかたと今後の維持管理に役立てる。
 Hネクイハムシ亜科の進化生物学的研究(林 成多)
ネクイハムシ亜科甲虫類の系統進化について、DNA解析も含めて研究を行う。日本列島のネクイハムシ亜科の進化を探るには日本の周辺地域も研究フィールドとする必要があり、極東ロシア、韓国、中国、東南アジア、北アメリカなどの種についても検討する。
 I島根県の止水および流水域に生息する水生昆虫類の保全生物学的研究(林 成多)
島根県の湿地や池、河川に生息する昆虫類の分布状況や生態を、斐伊川水系を主なフィールドとして解明し、水辺環境に生息する水生昆虫類の保全について検討する。
 Jヒラタドロムシ科の分布と幼虫期の解明(林 成多)
河川環境の指標として重要なヒラタドロムシ科について、山陰の河川での分布状況と日本産全種の幼虫期の解明を行う。
 K山陰の海岸に生息する昆虫類に関する研究(林 成多)
海浜や岩礁といった特殊な環境に生息する昆虫類について、宍道湖・中海の湖岸も含めて調査を行い、その生息状況を解明する。近年の海洋汚染や自然海岸の減少が海岸昆虫相に与える影響についても検討する。
 Lグリーンパーク周辺の鳥類定量カウント調査(土江好子)
宍道湖グリーンパーク周辺を環境別に7つのサイトにわけ、出現種や個体数の変動などを把握することで、鳥類の生息環境保全のための基礎的資料を得る。
 Mグリーンパークにおけるナゴヤサナエの羽化殻調査(土江好子)
多自然型湖岸堤(ワンド)で発生するナゴヤサナエの個体数と消長を調査、希少種ナゴヤサナエの保護管理計画に資する。
 Nシンジコハゼに関する研究(越川敏樹)
近縁種のビリンゴとの分布の特徴および発育に伴う形質の差を明らかにする。

◎委託研究
 @ガン・カモ・ハクチョウ類個体数調査(継続)
  斐伊川〜宍道湖のもっとも重要な水鳥であるガン・カモ・ハクチョウ類の全量調査を行う。
  委託先:日本野鳥の会島根県支部
 A流水性甲虫類の分子系統解析(新規)
山陰の河川に生息する流水性甲虫類の分子系統解析を行い、その遺伝的な多様性について検討する。比較のため、日本各地のサンプルについても分析を行う。
  委託先:曽田貞滋 氏(京都大学大学院理学研究科)
 B島根県の希少昆虫生息実態調査(継続)
レッドデータブックに掲載された絶滅を危惧される希少昆虫(特に中〜小型の甲虫類、半翅類全体)の分布、生態を調査し、保護対策を提言する。
  委託先:山陰むしの会(尾原和夫 氏)
 C山陰のブナ帯にすむ節足動物の生息実態調査(継続)
大山に代表される山陰のブナ帯に生息する節足動物(昆虫、クモ、土壌生物)の総合的な調査を行い、今後の保全のありかたを検討する。
  委託先:門脇久志 氏(環境省野生動植物種保存推進員)
 D宍道湖・中海に生育する水草類の分子系統解析(継続)
宍道湖・中海に生息するカワツルモ、イトクズモなどの希少水草の汽水域への侵入の歴史をDNAの塩基配列に基づいて調べ、汽水域に生息する希少な水草の保全対策に資する。
  委託先:國井秀伸 氏(島根大学汽水域研究センター)
 E希少植物種の県内の生息実態と尺の内公園を活用した保護繁殖の検討(継続)
県内の希少植物について生息実態を調べながら、尺の内公園への移植による保護増殖の可能性についても検討する。
  委託先:木久村喜則(島根自然保護協会)

◎国際共同研究
 環日本海の生物に関する研究を進めるために、各国の研究機関と共同で調査ができるような体制を整えていく必要がある。これまでに交流があったのは次の2カ国。
 @ロシア ロシア科学アカデミー(ウラジオストック生物学研究所)
 A韓国  慶尚北道(慶尚北道・淡水魚保護センター)

5.「普及教育事業」の基本的な考え方
(1) 方針
普及教育事業は、子どもや地域の人々に自然の仕組みや大切さ、花や鳥や虫がどう暮らしとかかわっているのかを楽しみながら学ぶ基本的な事業と位置づけ、積極的に取り組む。
宍道湖や中海など地域の自然特性を活かしたテーマに重点を置く。
宍道湖グリーンパーク(ビオトープ池)やふるさと尺の内公園など財団が整備してきた施設の特色を生かしたテーマに重点を置く。
実施する意図を的確に捉えつつ、参加する側がわかりやすく楽しめる内容にする。
調査研究で得られた知見を取り入れるなど学術的な内容も盛り込んでいく。

(2) 具体的な進め方
 @自然観察会の開催
地域住民や小中学生を対象に、鳥類や昆虫類、魚類などのほか子どもにも親しみやすい題材をとりあげ、自然保護意識啓発のための季節に合わせたプログラムを組んで開催する。
 ・宍道湖グリーンパーク
 定例観察会として年間12回を計画する。グリーンパーク北側のビオトープ池や国土交通省が整備した多自然型湖岸堤も活用していく。
 ミニ企画イベントとして年間24回を計画する。観察会よりも気軽に参加できる内容とし、まず自然とふれあう、自然と親しむきっかけづくりとして実施していく。
 ・ふるさと尺の内公園
 定例観察会として年間6回を計画する。
 昆虫教室として年間5回を計画する。小中学生を対象として、共通のテーマに連続して参加することで、昆虫を通して自然や生態系についてより深い理解を得られるプログラムを実施していく。
 Aホームページの運用
約2カ月ごとの定期更新のほか、フィールド情報やイベント情報などタイムリーな情報発信をしていくため、部分的な更新もスムーズに行ない、より一層充実した内容を目指す。
 Bニュースレターの発行
来園者や観察会参加者、財団の活動に関心を持つ方々に自然情報や財団の活動をわかりやすくつたえるとともに、記録として残すことができるニュースレター(2カ月に1回、4ページ程度)を発行する。また、全国の自然保護団体や博物館などとの交流や情報を交換するために雑誌交換にも供する。
 Cパークボランティア制度
ボランティアの質向上の研修を必要に応じて実施する。観察会のプログラム材料、参加者に興味づけるノウハウの勉強会やボランティア同士のコミュニケーションをはかる。ボランティアの人たちに達成感を感じてもらう活動の場を提供したい。
 D民間団体への助成
野生生物の保護、自然環境の保全活動を続けている民間団体、小中学校などへ助成をしてきた。今後も、財団事業目的に合致したすぐれた活動をする民間団体には、パートナーシップに基づく助成を検討していきたい。
 E公共サービス
普及教育ではないが、グリーン財団が社会的に認知されてきた証しとして、次のようなサービス業務がある。いずれも業務に支障のない範囲で今後とも対応していきたい。
   「公的機関からの審議会委員就任要請」
   「公的団体からの講師派遣の要請」
   「マスコミからの各種の問い合わせ、取材対応」。

6.「情報収集発信事業」の基本的な考え方
(1) 方針
研究所としてもっとも重要な「標本」「文献」「写真」「映像」「データ」などでの「知的資産」を収集、整理し、適切に保管しながら、展示や情報提供などへの活用図る。
基本的な文献と標本を揃え、情報の集積とデータベース化を進める。

(2) 具体的な進め方
 @標本の収集、整理、保存
  研究用の標本を収集、整理、保存する。
  普及教育活動に必要な標本をそろえる。
 A文献の収集、整理、保管
  研究所に必要な文献資料を入手し、データベースに登録する。
入手にあたっては、各地の研究機関、博物館、大学との雑誌交換(ニュースレターや研究報告書など)によって収集するほか、必要な文献は計画的に購入する。
 B映像・写真の収集、整理、保管
  研究所に必要な映像・写真を収集し、保管する。さらにはデジタル化をはかる。
 C学会への加入、参加
  関連学会に加入し最新情報を得ると共に、全国の関係機関や研究者とコンタクトをとる。
 D研修会・シンポジウムなど
研究所の実習室を活用した研修会、講演会などを開催する。
 E研究報告書の発行
研究成果の公表(情報発信)を目的にして、平成20月3月に第11号を予定する(B5版、300頁、1000部発行)。全国の博物館、大学、研究所、学会、自然保護団体などの関連機関および島根県の行政機関、関連団体、公立高校、公立図書館などに寄贈する(雑誌交換)。
 F収蔵資料の整理と活用
文献や標本などの整理をし、データベース化などの作業を進める。整理の済んだものについては「収蔵資料目録」の発行やホームページ掲載などを検討する。
 Gふるさと尺の内公園のパンフレット/普及書の作成準備
尺の内公園の生きものや自然観察などをテーマにした普及教育資料の作成を検討するために、必要な写真や記録の収集などに着手する。

7.「地方公共団体からの受託事業」の基本的な考え方
 地方公共団体から業務の委託を受けることは、当財団の寄付行為にも明記してあるとおり、目的の一つであるだけでなく、特定公益増進法人の認可条件ともなっている。今後とも地方公共団体からの受託業務は、積極的に受託していくものとする。なお、平成17年度より指定管理者制度の対象となった宍道湖自然館ゴビウスの管理運営業務も同様に考え、さらに充実・発展するように取り組んでいく。

[参考]平成19年度は平成18年度とほぼ同程度の受託事業が想定される。
 @宍道湖自然館ゴビウスの管理運営事業
  島根県水産課からの委託業務(指定管理者)。
 A鳥類生息調査
  島根県森林整備課からの委託調査。
 B宍道湖環境学習運営業務
  国土交通省からの委託。
 C出雲市自然環境調査研究
  出雲市からの委託調査。
 D宍道湖(中海)のカワウ生息調査
  環境省からの委託調査。
 E河川調査
  島根県自然環境課からの委託調査。
 Fラムサール関連事業
  島根県から宍道湖、中海のラムサール登録にともなう各種普及啓発業務の要請に応える。